2017年10月27日金曜日
がんばる、という規律を守れなくなるうつ病
うつ病になる人は「真面目で、頑張り屋」の人が多い。
だから、このくらいの辛さで挫けてはいけない、もっと頑張れる、と考える傾向が強い。
人が自分の苦しさがどれほどのものであるかを主観的に評価するとき、自分は世界で一番つらいのか、普通につらいのか、あるいは、こんな程度でつらいと思ってはいけないくらい「軽い」程度なのか、と色々考える。
そんなときに、頑張り屋さんの度合いと真面目さが重症度の自己評価に影響を与えることは容易に想像が付くだろう。
■頑張れないのなら死んでしまいたい
先生、もうだめです。
会社を辞めようと思います。
みんなの前で笑顔を作るだけでも精一杯です。
全部投げ出してしまいたいです。
でも、そうしたらみんなに迷惑がかかるから、会社を辞めようと思います。
本当はそんなに辛くないけど、自分は大げさに言って、
私だけにげようとしているんじゃないの?と思います。
そう周りからも言われている気がします。
あなたは甘ったれているだけじゃないの?と言われている気がします。
■人が死を賭ける「規律」
人が死んでしまいたいと思うのは
思ったとおりに人生が進まず、
自分の納得できるような生き方できなくなった時だ。
「思ったとおりに」というのは何かわがままが通らずに、ということではなく
生きていくのなら最低限ここだけは守っていこうと言う自分なりの
「規律」が守れなくなった時、
頑張れなくなったときという意味である。
人がそれぞれ自分に課している生き方の「規律」は軽くは無い。
命を賭けるくらいに厳しく自分に課している規律である。
だから、それを守れなくなったときに、人は死んでしまいと思う。
それぞれが自分の中に生きる「規律」を持っている。
その規律とは実は、
人とのつながりを保つために作り上げてきたものだ。
その規律を保とうとして人は頑張り、
それが守れないと感じたとき、
死んでしまいたいと思う。
うつ病の辛さの中で人は自分が守ってきたこの規律と対峙する。
生きるために規律をつくり、それを自分に課して、守っている。
精神的には、それは自分と人との繋がりを保ち、
自分が「ここ」にいてもいい、
自分が生きていてもいい、自分は歓迎されている、自分は生きることを許されているという
自己肯定感、安心感を作り出している。
■頑張りの空回り
しかし、規律は一度出来ると、もともとの必要性、すなわち生きるため、から離れて
「一人歩き」するように見える。
規律を守れない自分を責め、うつ病になり、そして、規律を守れない自分は生きる価値が無いと生きることを否定し最後には自殺へと及ぶことさえある。
安心して生きるために作り上げた規律が今度はその人の人生を破壊してしまう。
うつ病からの回復は真の回復は、頑張れない自分を許し、生きる規律を作り替えることである。
■自責の念=自分への怒りがうつ病を発症させる
単なる頑張りすぎでは
うつ病は発症しない。
うつ病発症には過労状態に加えて
自責の念が不可欠である。
うつ病の発症=心身の過労状態+自責の念(自分への怒り)
この二つのうち、うつ病発症により本質的なものは、
自責の念である。
私たちはどんなときに自分を責めるのか。
それは自分が決めた規律を守れなったときである。
こうしたほうがいい、こうすべきだ、と
なすべきことを決めて、それが出来なかったときに
人は自分を責める。
どうして出来ないんだ、何で間違えたんだ、
こんなことをもできない自分はダメだ、
自分を許せない、自分が悪い、となる。
こんなことでへこたれている自分はダメだ、
自分はだらしない、意気地が無い、
頑張れない、だから、自分はここにいてはいけない、
生きている価値が無い。
そして、死んでしまいたい…と、とめどなく苦しくなる。
自殺、すなわちダメな自分を殺すことは
自分を責める気持ちの究極的な表現なのである。
■もっとがんばらないといけない、そうしないと怖い
あまり仕事をやり過ぎないように、疲れすぎないようにって
やっているのですが、
それがうまくできなくて。
ふつうにやっているつもりなんですが
どうしても疲れてしまうんです。
やりすぎないようにするのは難しいです。
頑張らないのは怖いですか?
そうです。頑張らないと怖いんです。
不安になります。
こんなに頑張れない自分じゃダメだって思います。
頑張らないと不安で落ち着かなくなります。
でも、今までと同じように頑張っていたら、
うつ病が再発してしまうと、そう考えて、どうしていいかわからなくなります。
…
人は頑張って、前向きに生きていかなければならない。
そうしないと不安だ。怖い。
彼女は、頑張りの根本にある恐怖に気づいた。
生きようとする頑張りの根本にあるのは、恐れである。
頑張らないと見捨てられる。頑張らないと認められない。
頑張らないと一人ぼっちになってしまう。
頑張らないと食べていけない。
頑張りの根本には
こういう恐怖がある。
それらを避けて生きていくために、
だから、頑張らないといけない。
彼女は涙を流しながら会社に向かった。
疲れ切って挫けそうな彼女を行動に駆り立てたのは
怒りであった。
涙は恐怖や怒りのさらに深いところにある悲しみから流れ出したものだ。
人は生きていかなければならない、その悲しみです。
頑張らない自分はいてはならない、許されていない。
そう思って怖い。
そうですね。生きている以上、「頑張らない」のは無理ですよね。
人一倍、頑張らないことは苦手なようですから。
自分が小さい頃から作り上げてきた生き方、
それには深い人生の意味が込められている。
だから変えていくのは大変な作業だ。
簡単には変わらない。
でも、変わらないことに気づけば、それが自己受容だから、変わる。
■それでも、人生は頑張るしかない
不安は面白い性質を持っている
それを避けようとすると、不安はますます大きくなり
それを正面から見つめると、不安は小さくなる。
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