ショートステイに行くための荷造りを母の部屋でしていたとき、ノートを見つけました。
何だろうと思いページを開くと、
「娘の人生のために私は犠牲になった」
「孫が生まれても嬉しくない」
それは、母が60歳の頃に書いた日記だったのです。
最初は信じられませんでした。
言葉の一つ一つが胸に突き刺さり、読んでしまったことを後悔しました。
父の居ない家庭で私は10代から芸能界で仕事を初め、母の暮らしを支えてきた自負がありました。
それを全否定されたみたいで、平静でいられない自分が居ました。
こんな気持ちで介護を続けられるのか。
だからといって逃げ出すことはできない。
相反する思いの中で続ける母の世話はつらいものでした。
介護生活がつらくなったとき、「お母さんがいるからあなたがいる。感謝の気持ちが大切よ」などと励ましてくださるかたもいます。もちろん、その通りです。
しかし、介護を続けていると、心の底に眠っていた確執や葛藤が、意に反して表面化してしまうことがある。
それを理解してもらうことは難しいことです。
今回の経験で知ったのは、1人で抱えて込むのは無理だと言うことです。
(2012年2月12日 読売新聞)
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