2013年2月22日金曜日

「もっと愛して!」→「私達、もう終わりにしましょう」


 

 

◇不安は容易に怒りや攻撃に変わる


「言葉」と「伝えたい思い」は本来、セットであるはずなんだけど、人間は感情の生き物なので、時に、
「伝えたい思い」が「不適切な言葉」として発せられ、相手も「不適切な言葉」から「相手の伝えたい思い」を受け取ってしまい、人間関係は加速度的に悪化の方向に向かってしまうことがよくある。


「伝えたい思い」が相手に伝わらないと人間は怒りを覚える。
そして、その怒りは「伝えたい思い」を歪ませ「不適切な言葉」を相手にぶつけてしまう

お互いがお互いを大切に思っているのに歪められた言葉によって深刻な距離が生まれてしまうのは本当にもったいないことだ



旦那からの愛を感じられないと「私をより元カノがいいんでしょ!」という”攻撃”をしてしまっている愛さんの例を書きに記す。



 

***



紘一さんは、とても優しい夫で、妻の愛さんは現在の生活には何の不満もないのですが、唯一ひっかかることは、
夫が結婚前に交際していた女性のことです。

幸一さんは、その女性のことがとても好きだったらしく、結婚を目指して数年間交際していたのですが、結果としては「結婚はできない」と先方から、振られてしまったようです。


その前から紘一さんのことを好きだった愛さんは、チャンス到来とばかり、幸一さんにアプローチし、
見事に結婚までこぎつけることができました。


紘一さんは、もちろん、愛さんに気を使って、前の恋人のことを話したりしません。

しかし、紘一さんから充分に愛情が感じられないようなときには「前の彼女のことを思い出しているのではないか」と思ってしまい、胸が締め付けられるような苦しさを感じるのです。
そして、イライラしてしまい、「どうせ私となんか結婚しなければよかったんでしょ!」と怒りをぶつけてしまうのです。

紘一さんからみれば、自分が結婚しているのは愛さんであり、確かに前の彼女のことは好きだったけれども、
それはその時代の事です。


愛さんからそうやって責められてしまうと、結婚という、人生で最も大きな決断をした自分のことすら馬鹿にされているような気がしてしまいます。

最初のうちは、愛さんが嫉妬しているだけだと思って、「大丈夫だよ。もう彼女とは別れたんだから」などと宥めるのですが、
あまりにもしつこいと頭に血が上がってきて、
「どうしてそんなにしつこいんだよ!」「確かに君なんかと結婚しなければよかったかもしれないな!」などと怒鳴ってしまうことも出てきました。


すると、愛さんとしては、「やっぱり」ということになってしまい、「どうせ私はしつこいわよ。前の彼女はしつこくなんかなかったんでしょ。やっぱり後悔しているのね。 どうぞ、今からでも前の彼女と結婚したら?いつでも分かれてあげるわよ」と怒ってしまうのです。

 

***


 

■「私だけを愛してね」が歪む


愛さんが本当に言いたいことは決して
「いつでも別れたあげるわよ」ということなどではありません。

むしろ「私の事だけを愛してね」ということを本当に言いたいことです。


旦那さんもそういう覚悟で結婚しているのに
二人の間には思いはズレていないのに実際には「ズレ」が生じてしまっている。
では、なぜこんな問題が起こってくるのでしょうか。



一つは実は現在の問題であることが過去の問題にすり替わっている、ということがあります。
愛さんは、自分が夫から愛されていないような気がすると
「前の彼女の方がよかったのではないか」という思いが頭をもたげてきます。

この気持ちは、夫からの愛を十分に感じて満たされている時はほとんど気にならないものです。

つまり、「夫は前の彼女と自分と、どちらがよいのか」という話よりも
本質的には「現在、夫からの愛をどのくらい感じられているか」ということになります。
旦那さんの過去の恋人の事がひどく気になるのは
現在の旦那さんから十分に愛情を感じられていない時なのです。
ですから、取り組むべきは「現在の旦那さんの愛情表現」というテーマであって、
実は過去の恋人の事ではないのです。

そして問題が「現在の旦那さんの愛情表現」だということがわかれば
旦那さんにとって、はるかに前向きに取り組めるテーマになるでしょう。


愛さんが愛されていないと感じるのはどんなときか
どんな言動に愛を最も感じるのか、などということを一緒に見ていけば良いでしょう。

愛されていないと感じるときが仕事で疲れている時なのであれば
旦那は仕事で「疲れている」ということを言えばいい。



もう一つの問題は愛さんのコミュニケーションです。

本来の気持ちどおりに
「私の事、本当に愛している?」「愛されていないようで寂しいわ」といえば
旦那は優しくしてくれるでしょう。
しかし実際には「前の彼女」を持ち出して
旦那さんの結婚判断まで責め立てるようなことをするので旦那さんも怒ってしまうのです。


私たちはどうしても
「私の事、本当に愛してる?」「愛されていないようで寂しいわ」というような
自分を剥き出しにするコミュニケーションが苦手です。
その代わりに「あなたは」と相手の問題にすりかえてしまうのです。

むきだしのコミュニケーションをする勇気が出ないというのは十分に理解できることではありますが、
これでは本当は何も「ずれ」がないのに
離婚の危機にすらなりかねないのです。
思い切って勇気を出したほうがよほど安全なのです。


 

■怒りは思いを歪める

心が傷ついている時の反応は、怒りという形をとることが非常に多いです。

これは二度と傷つかないようにするための防御反応みたいなもので、
少しでも傷つけられそうな兆候を察知すると相手を激しく排除する、という仕組み(つまり、「相手に」腹を立てているのではなく「自分の」危険を排除するための必死の自己防衛)
なのですが、怒りは人間関係を損ねるものです。

 

■生産性のあるすれ違いにするために

時に不適切な言葉を制御することが出来ない場面もあるでしょう。
だけど、「どうして自分は不適切な言葉で相手を攻撃してしまったのか」ということを顧みる能力を磨くことは、
仲直りへの助けになるし、むしろ雨降って地固まるという言葉に持っていくためには必要なことではないかと思っている。

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