2013年2月12日火曜日

「死にたい気持ち」を否定しない




どういう種類の本音とか感情とかであっても、否定されるのは苦しいことです。
近しい人なら、なおのこと!!

常識的には吐露してはいけないような本音や感情であっても、
「この人だけは、何を言っても受け止めてくれるし逃げていかないでくれる!」という存在は、病気の人でなくても人生を豊かにする重要な要素であると思います。

 


◇その人が感じる感情は否定されるべきでない

たとえば、数学のテストの答えが2で、ある生徒さんは3って解答したら、間違いです。
でも、感情は違います。かんじたその人の感情は常に正解であるべきです。
失恋をした場合、ある人は「ふられちゃったか~また新しい人を探そ!」と失恋と言う出来事に対しても次への期待という前向きな感情を持ちます。
ある人は、「俺を振るなんて、ゆるせねーな!」と怒りという感情を持つ人もいます。
そして、ある人は、「失恋しちゃった…もう死にたい」と、死にたい気持ちを感じるかもしれません。

失恋に対して、それぞれの人が持つ感情に不正解はありません。
その人が感じた、希望・怒り・死にたい、それぞれの感情は、その人にとっては事実なので、否定されるべき性質のものではないのです。


…「感情はそれぞれの人がそれぞれに感じて正しい」ということを前提に進めていきます。
このエントリーでは、うつ病の症状の一つである自殺願望を表明されたサポートする側の人(家族恋人友人など)は、
そのカミングアウトをどう扱えば良いのか考えてみたいと思います。






■うつ病の自殺願望の扱い方


うつ病の深刻な症状に自殺願望があります。
これは本当に命に関わることであるので、軽視してはいけないものです。

自殺のリスクが高いときは入院したほうがはるかに安全です。


では、家族の役割は何か?というと、
まずは患者さんが役割期待について抱えている間違った思い込みを
是正する必要があります。
それは、うつ病で自己評価が著しく下がった患者さんがよく抱くものですが
「自分が生きていることが迷惑なのだから、死んだほうが相手のためになる」という
間違った思い込みなのです。


家族は一瞬、悲しむかもしれないけれども、
すぐに自分のことなど忘れて幸せな生活に戻るだろうと
本気で思い込んでいる人は少なくありません。


そういう人には、まず、こちらの期待していること、
「何をしてもいいけれども、とにかく生きていて」という思いを強く伝えましょう。

あまりにも患者さんが頑固で
「それは本音ではないはず。本当は死んで欲しいと思っているのだろう」と言い続ける場合には、もしも患者さんが自殺をしてしまったら自分は一生自分を責め続けることになる、
ということを伝えてもよいでしょう。

これは「相手を視野に入れる」というやり方であるとも言えます。
患者さんを失うことを思えば、今の苦労など何でもない、ということを強調しましょう



そもそも、誰よりも苦しんでいるのは患者さん本人なのであって、
家族ではない、ということも伝えましょう。
その証拠に、本人は自殺したがっているけれども
家族はそうではないのです。

家族が病気になっていない、ということは苦労があるとしてもまだまだ耐えられる範囲なのだ、
という理屈を説明しても良いでしょう。







 

■死にたいほど辛いという気持ちは遠慮させない


「死なないで欲しい」という希望は強く伝えるべきですが
同時に「死にたいほど辛いという気持ちは遠慮なくて話して欲しい」ということも
伝えるべきです。


ご家族の中には、患者さんが「死にたい」というと
「もう、その話はしないで」といったり、ため息をついて落ち込んだりする人も居ますが
そういうコミュニケーションは、患者さんが辛さを表現する自由を奪ってしまいます。
病気が治るまでは耐えるしかない患者さんにとって、それがどれほど辛いことかを
理解する必要があります。

「死なないで欲しい」というのは、行動面への一つの注文にすぎず、
「死にたい気持ち」という症状を「治療」することはできないのです。

「絶対に死なないでね。でも、死にたいほど辛いでしょうから、何でも話して。
 話せば少しは楽になるかもしれないから」というふうに言うと良いでしょう。


自分は、家族に迷惑をかけていると思っている患者さんは、
家族に「愚痴」をこぼすことは迷惑に決まっている、と思い込んでいることが多いのです。
そういう場合には、
「思いつめるより、愚痴をこぼしてくれたほうが、むしろありがたい」ということを伝えましょう。

 




■哲学的に人生を考えちゃうのも症状


慢性のうつ病の方の中には「人はなぜ生きるか」「人はなぜ生まれてきたのか」
などというテーマを深刻に思いつめている方も少なくありません。

感受性が強い人がうつ病になりやすいということも関連していると思いますが、
人生の意味について正解を欲しがるうつ病の人に対しては

「そういうテーマは、うつがひどくなると必ず出てくるもので、今はそれを真剣に考えるべきときではありません。
 うつがよくなれば、多くの方がそんなことを悩んでいたことすら忘れてしまいます。
 つまり、健康な人は”人はなぜ生きるか”などということはあまり考えずに
 何とか毎日を過ごしているものなのです。
 これは、うつ病の症状である罪悪感とも関連しているのかもしれませんが
 何となく毎日を過ごすことが悪いことであるかのように捉えるのも、うつ病の症状です。
 人生については、うつが治ってから改めて考えてみてはどうでしょうか」

と、諭しもせず流しもせず、「治ったら考えましょう」という態度で行きましょう。
もちろん、「考えることも病気の症状だからね」というスタンスを摂っていることが前提です。

ただ流すだけでは、「なに、くだらないこと考えてるの、バカ!」という
スタンスなのだと誤解される恐れがあるからです。




そして、実際にうつがよくなってくると、
そんな時間を忘れてしまう人もいますし、
「当時あんなことばかり思いつめていたのは不健康なことだったと思った」と
おっしゃる方が多いものです。

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